札所六番堂は荻野堂といい、本尊は聖観音(伝行基作)である。縁起によれば、本尊は武甲山頂の蔵王権現社に永く鎮座していた後に、荻野堂に移されたと伝える。当初、荻野堂は苅米5区の竹の後にあったが、火災に逢い、宝暦10年(1760)、別当寺の卜雲寺に移された。荻野堂のあたりには「卜ヶ池」という大きな池があったと伝えられ、縁起に登場する。
卜雲寺は向陽山と号し、曹洞宗である。開山は撫外春堂、開基は卜雲入道(前出の嶋田三河守四郎左衛門)。寛永15年(1638)の創立である。
明治9年(1876)8月、卜雲寺は本堂、および境内にある荻野堂や庫裏などを全焼する被害を被った。しばらくして明治40年(1907)頃、寺の堂宇は再建されたが、以降、本堂に荻野堂の本尊を合わせ祀ったことから、現在は「札所六番卜雲寺」と称されている。
同寺には、荻野堂の縁起を記した町指定文化財「紙本着色荻野堂縁起絵巻」(前出No11)、同じく秩父地方唯一の「清凉寺式釈迦如来立像」(前出No15)が所蔵される。
御詠歌
初秋に風吹きむすぶ荻の堂
宿仮りの世の夢ぞさめける