通例の和鐘形式を示し、法量からすると半鐘に分類されるものである。笠形が顕著に盛りあがり、やや胴長な円筒型の鐘形に江戸鐘の特徴がよく表れている。
縦帯表側に「秩父五番目准提観世音菩薩(蓮台)」の陽鋳銘があり、札所5番語歌堂本尊に奉納するために鋳造された鐘であることが知られる。池の間の陰刻銘によると、江戸傳通院陸尺町(文京区小石川)の野口氏川越屋久八を願主として、同町在住の24名の町民が結縁し、明和元年(1764年)10月に江戸神田の鋳物師西村和泉守政時に鋳造させて施入したことがわかり、当時秩父5番語歌堂本尊准提観世音菩薩は、江戸の町民の篤い信仰を集めていたことが窺える文化財である。