秩父札所第10番大慈寺(曹洞宗)木造聖観世音菩薩坐像(本尊)。像高(坐高)は44.7㎝、髪際高で35.7㎝を測ることから、『新編武蔵風土記稿』に「本尊正観音、木坐像長一尺三寸、恵心僧都の作」と見える像に該当するものとみなされる。
秩父地方では数少ない法衣垂下像の優作で、珍しい法衣垂下像の作例である。製作時期は14世紀後半代頃と推定され、作者は宅間派系の鎌倉仏師と思われる。
本像の特徴としては、蓮台上に坐して左右に長く着衣の裾を垂らした脚組が、衣文の構成から見ると明らかに右足上に結跏趺坐したもので、左右の足先は深く衣に隠されているべきものだが、不思議なことに右足先を垂下する左裾の間に覗かせていることである。これは仏師もしくは元になる絵様を描いた絵仏師が視覚的な鑑賞性を優先させたデザインであり、その意味では法衣垂下像の異色作といえる。
※令和8年午歳総開帳(大慈寺にて公開予定)