カヤはイチイ科の常緑高木で、葉は扁平線状、革質で厚く先端は鋭い。雌雄異株。4月頃開花。実は広楕円形で、核は食用・薬用とし、また油を搾る。材は磨くと光沢がでて碁盤、将棋盤などに使われる。分布は本州、四国、九州地方である。
このカヤの木は、芦ケ久保大畑地区の山裾に所在し、胸高樹周4.1mの巨木である。樹梢に多少の損傷がみられるが、樹勢旺盛である。
木の元には、町田家の氏神を祀る祠がある。昔、カラタチの先達が逃げてきて、御名(屋号)に隠れた。隣組では余罪を恐れて追い出し、先達は捕らえられて問屋(屋号)の前の地蔵のそばで、首をはねられた。これを氏神の場所に葬り、隣組にたたりのないように氏神として祀ったと伝えられている。また、根元には中世の板碑が数基あり、木に巻き込まれている。この伝説と信仰の遺産は、カヤの大木と人々の生活との関わりを示す事例として、特筆した。