武甲山御嶽神社里宮の本殿・内陣の梁上に懸けられており、縦56.7cm、横89.0cmの大絵馬である。四隅に刳り込みを入れた欅の1枚板に、馬丁2人に口を取られた赤腹帯の神馬1頭を墨に淡彩で描いている。画面右下に「狩野素川筆」の落款がある。
裏面には、「寛政10年戊午歳(1798)3月吉祥日 武州秩父郡大宮 藤村儀兵衛伜 重治郎」の寄進銘がある。
これにより絵馬の筆者は狩野派の絵師素川、奉納者は秩父郡大宮郷(現秩父市)の人、藤村重治郎であることが知られる。狩野派系図によれば、素川を名乗る人は2名いるが、信政素川の子彰信素川という人物がこれに該当するかと思われるが、その経歴等は定かではない。また、奉納者の藤村重治郎についても未詳である。